Youtube名演探訪シリーズ#3 - ショスタコーヴィチ/交響曲第4番の終楽章のコラール

このシリーズ第3回は初めての交響曲ショスタコーヴィチでは今のところ一番好きな4番だが全曲レビューは疲れるので、特に気に入っている3楽章終盤を聴き比べる。ティンパニ2台のクレッシェンドによる導入から始まり、C-E-G-G → H-D-G-G → A-C-G-Gis(!!) → G-H-G-Aという、ショスタコの不快味付け和声の真骨頂のような破壊的なコラールがトランペット4人で演奏される。5回出てくるが、最初と最後以外の3回はG-H-G-AではなくG-B-G-Aである(短調っぽい?)。何か大きな秩序が内側から崩壊していくような、この曲の初演の経緯を知って聴くととてもイイ気分になれる壮大なクライマックスである。4管で演奏人数134人は15曲中で最も多く、演奏も最難関といわれる。機会があればホールで聴きたい一曲。

基本的にはコラール部分のトランペットがどれだけ破壊的な雰囲気を出せているかを総合的に評価するが、それ以外の部分についても適宜コメントする。

 

シモノフ/ベルギー国立管

https://www.youtube.com/watch?v=xjsKdFPjZh8&t=18m34s

まずはイチオシの演奏を。ここまで4本のトランペットの音量バランス、発音、音程、音色などなどが完璧に揃っている演奏は貴重。フレーズ感も素晴らしく、超新星爆発のようなエネルギーをかんじる。。。オケは超一流ではなく、後半に行くにつれてミスもあるが、特に初回の破壊力は凄まじい。どっかの聴き比べサイトで絶賛されていたので通して聴く価値があると思う。

 

ゲルギエフ/キーロフ(マリインスキー)2001

https://www.youtube.com/watch?v=hVldwbGN34I

言わずと知れた有名どころ。ティンパニが速度を上げるタイミングが早いのが特徴。コラールについては、音程はそう悪くないが音量、音色などいまいち迫力に欠ける。3rdに比べて1stの音量が足りない。ちなみに同コンビの2013年録音の新盤も聴いたことがあるが(youtubeにはない)、こちらもズレていて迫力に欠ける。

 

ヤンソンス/バイエルン 2004

https://www.youtube.com/watch?v=uVO4Hfy77jg&t=56m42s

1stの音は綺麗だが線が細く、やや落ち着きすぎた雰囲気になってしまっている。Trb・Tubaが立派過ぎるのもあるかな。

 

V.ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプール・フィル

https://www.youtube.com/watch?v=azcVQ8Hu_Rc&t=20m30s

遅め。というか重め。もう少し3rd、4thの音量が欲しい。

 

ネルソンス/ボストン響

https://www.youtube.com/watch?v=DzcoxMEJRmw&t=55m15s

1stが余裕ぶっこいてオシャレなアーティキュレーションとビブラートを入れるのでソヴィエトの雰囲気台無し。アメリカオケあるある。 

 

ハイティンク/ロンドン・フィル

https://www.youtube.com/watch?v=xE8TC9gZGR8&t=14m30s

音ちっちゃい。木管

 

ハイティンク/シカゴ響

https://www.youtube.com/watch?v=aUOYapWCXa8&t=1h1m9s

かなり遅い。このテンポであまりブレスを目立たせず4音吹ききるシカゴ響恐るべし。後半のトロンボーンも聴きもの。惜しむらくは1stの音量が2ndに比べてやや小さいところか。ピッコロに埋もれて聴こえる。響きの美しさがむしろ和音の汚さを際立たせる独特の効果を挙げていて、割と好きな演奏。 

 

サロネン/ロサンゼルス・フィル

https://www.youtube.com/watch?v=UQqPbXRMYEs&t=20m30s

音程とかバランスとかはまあまあだが、やや音が弱い。収録がウォルト・ディズニー・コンサートホールなのと、カップリングに世界初演があるのと、5回目の手前でめっちゃタメるのが好き。

 

チョン・ミュンフン/フィラデルフィア

https://www.youtube.com/watch?v=U_3NeUo_KSA&t=11m55s

速い。埋もれてよく聴こえない。却下。

 

ラトル/バーミンガム市響

https://www.youtube.com/watch?v=5ITWxTIGl_Q&t=55m0s

割と良い。シモノフの1回目ほどではないが平均的にレベルが高い。特に低音金管とのバランスが優れている。録音が割れててちょっと残念。

 

プレヴィン/シカゴ響

https://www.youtube.com/watch?v=ujWSdQAaqIE&t=18m32s

もうちょい音の切りのタイミングを揃えてほしいが、基本的には良い。余裕の表情という感じで、さすがシカゴ響。強いて言えば必死さが足りない。

 

プレトニョフ/ロシア国立響

https://www.youtube.com/watch?v=N-g9CJQY9MI&t=22m34s

他にもいくつかあるが、爆発の瞬間の音量よりその後がしぼんだ感じになるのはふさわしくないと思う。和音が汚くなり、上下の幅が広がるにつれて、音量は上がることはあっても下がってはならない。

 

ロジェストヴェンスキー/ソヴィエト国立文化省交響楽団

https://www.youtube.com/watch?v=CP-OJTOJHZU&t=56m55s

オケの名前が好き定期。ロシアンブラス万歳。ティンパニ万歳。録音悪いのもいい味出してる。コンドラシンのもだけどAが高くてBが低いのは仕様ですか?ヤバい音してますよ。

 

ロジェストヴェンスキー/フィルハーモニア管

https://www.youtube.com/watch?v=itGt09ULj-0&t=18m34s

チューニングが低い。なんか音量変化が色々とおかしい。マイクのせいかな。4本の音量バランスとか音色はいい線行ってると思うがこれではよくわからない。

 

ロストロポーヴィチ/ロシア国立響

https://www.youtube.com/watch?v=2KL_injDGug&t=20m8s

あまりロシアンブラス感はない。1st以外がもう少し欲しいが全体としてそこそこ良い。

 

コンドラシン/モスクワ・フィル

https://www.youtube.com/watch?v=SUv68X_yRSo&t=52m36s

初演者たち。これは初演ではない。ロシアンブラス万歳!!

 

コンドラシン/シュターツカペレ・ドレスデン

 https://www.youtube.com/watch?v=q44Kr13q5gs&t=18m21s

録音が悪いが、コンドラシン指揮、ドイツ初演ということでアツさは十分。

 

N.ヤルヴィ/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管

https://www.youtube.com/watch?v=3_KWZutFM-U&t=55m06s

音程、音量バランスなどはかなり優れている。 ちょっとテンポがあっさりしている気もするが迫力十分。

 

バルシャイ/ケルン放送響

https://www.youtube.com/watch?v=bzg4DUhXW5c&t=55m3s

速め。ちょっと急いで聴こえるかなあ。やはり3rd、4thがもう一つ。

 

サラステ/シュターツカペレ・ドレスデン

https://www.youtube.com/watch?v=lyMWbw2oxbc&t=56m8s

埋もれ気味。特に爆発の瞬間がピリッとしない(よくあることだが)。

 

ノセダ/ロンドン響

https://www.youtube.com/watch?v=-TDYF1NdAtI&t=19m46s

音程は悪くないがプレトニョフと同じくだんだんしぼんでいく雰囲気があるのが微妙。

 

アシュケナージ/ロイヤルフィル

https://www.youtube.com/watch?v=5TOJWV6PiZc&t=12m30s

音の切りが目立つので特段の迫力はないが、まあまあ。

 

アシュケナージ/N響

https://www.youtube.com/watch?v=tKt8ZCgrpAs&t=12m58s

日本のオケとはいえ最近のN響なので音程は結構よくて綺麗。迫力はそんなにない。

 

セミヨン・ビシュコフ/ケルン放送響

https://www.youtube.com/watch?v=GykgOo40PLo&t=18m48s

ゆったりしたテンポ。安定した音程で最後まで伸ばしているし、バランスもかなり良い。おすすめ。

 

アンドレイ・ボレイコ/シュトゥットガルト放送響

https://www.youtube.com/watch?v=6Jj5F2dxQK0&t=20m9s

1stは上手いが、それ以外がもう一つ。音楽的にも何となくまとまりを欠く印象。

 

ギュンター・ヘルビヒ/ザールブリュッケン放送響

https://www.youtube.com/watch?v=0nxHL3MeTFs&t=19m49s

発音が揃わず、ピリッとしない。マイクが遠いのかもしれない。

 

インバル/ウィーン響

https://www.youtube.com/watch?v=CciWXbE5sj8&t=18m44s

1stに下がついてこれてない、よくある演奏。 

 

オレグ・カエターニ/ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団

https://www.youtube.com/watch?v=Ge6ODzp12JY&t=19m03s

クレッシェンドの箇所でバスドラが聴こえるのがまず不可解というか全体にバスドラが大きめ。いろいろとズレているし謎の金属音はするし、いろいろとおかしい。ショスタコーヴィチの15曲中、間違いなく録音難易度も最高であろう、と感じさせられる。

 

というわけで、おすすめはまず冒頭のシモノフだが、セミヨン・ビシュコフ、N.ヤルヴィあたりもほぼ不満はない。これから通して聴いていきたい。ソ連時代の演奏はなんだかんだいって金管が下手に埋もれたような演奏よりよほど雰囲気が出ている。サロネンの最後のタメはぜひ一度聴いてほしい。