一滴もこぼさず冷水機から水を飲む方法

はじめに

おそらく僕が今まで書いた中で最も奇妙なタイトルを持つこの記事は、ISer Advent Calendar の25日目の記事として書かれています。その理由は、僕が大学で摂取する水分のほとんどを情報科学科(ISと略される)の建物にある冷水機に依存しているからです。実際、まだ僕は本郷キャンパス内で一度もペットボトル飲料を購入したことがありません。冷水機は一階の階段付近にあり、通るたびに水を飲んでいるので、わざわざ飲料を購入する必要がないのです。

水分を冷水機に依存するということはすなわち生命を冷水機に依存することでもあるわけですから、冷水機への感謝の念というものが芽生えてきます。せっかく無料でおいしい、冷たい水が飲めるのだから、それを一滴も無駄にしないように僕は努力するべきではないか、と考えたわけです。その努力の結果としてたどり着いた、「一滴もこぼさず冷水機から水を飲む方法」について、理論と実践の面から解説します。

現状把握

さて、冷水機から水をこぼさず飲む方法を考えたいわけですが、そもそもなぜ普通に冷水機から水を飲むと水がこぼれて(口の中に入らず無駄になって)しまうのでしょうか?

まず考えられるのが、飲んでいる途中で口の中の水を飲み込もうとして口腔内の圧力が上がり、一時的に水をほとんど吸い込めない状態になってしまうことです。これを解決するのは簡単で、冷水機から水を飲んでいる途中に水を飲み込まなければいいだけの話です。もちろん、飲める水の量は口の中に一度に貯められる量までに制限されてしまいますが、個人的には十分な量だと思います。途中で飲み込まないといけないほど大量の水を冷水機で一度に飲みたい、という人はあまりいないのではないでしょうか。どうしてもそれ以上飲みたければ一度水を止めて飲み込んでからまた飲み始めればいいだけです。いずれにしろ飲み込むのをやめる以上の対策は考えていませんし、水を吸いながら飲み込むのは実際問題としてかなり難しいのではないかと思います。

さて、では途中で飲み込まなければ一滴もこぼさなくて済むのかというとそんなことはありません。おそらく通常は、飲み込んでいないタイミングでも一定量の水がこぼれ落ちているはずです。これを解決しようというのが今回の記事です。

原因の分析

この謎を解くカギになるのは、まず冷水機の水流が不安定であるということです。程度の差はあれ、冷水機の水は「ちょろちょろ」という擬音語からもわかる通り多少の揺らぎを伴って上昇してきます。おそらくあなたが冷水機の水を飲むときは、その揺らぎの影響を受けない中央部、つまり常に水流が存在する場所めがけて口を近づけ、飲んでいるはずです。だから、揺らいでいる外側の水(中央部に対して周縁部と呼びましょう)は、あなたの口の中に入ることができず、こぼれてしまっているのです。

ではなぜあなたは周縁部を飲もうとしないのでしょうか。これにも明確な理由があります。周縁部はタイミングによっては水かもしれないし、空気かもしれません。水と空気を両方吸い込もうとしたら何が起こるでしょうか。そう、あの音です。コップの底の残りわずかなジュースをストローで吸うとき、あるいは熱いスープを冷ましながら飲もうとする時の、あのズズーッという音が、間違いなく発生します。つまり、あなたは、社会通念上避けるべきものとされている液体を啜る音を発生させないよう、無意識に周縁部の水を捨てているのです。試しに周りに人がいないときに、いつもより大きめに口を空けて冷水機の水を啜ってみてください。すさまじい音がするでしょうが、ほぼ一滴残らず水を飲むことができるはずです。しかし周りに人がいない時しかできないのでは意味がありません。これをいかに社会通念に逆らわない「方法」に仕上げるかが重要なのです。

水の性質

この方法を考え、実践するにあたって一つ我々が把握しておくべきは、液体としての水の性質です。化学を勉強した人ならわかると思いますが、水は分子間で水素結合を形成しており、そのおかげで沸点・融点・粘度・表面張力などいずれもほかの液体より高く・大きくなっています。氷が水に浮くのも水素結合が原因です。

水面の端が壁に沿ってすこし上がっていたり、漏斗の口をコップに添わせると水が速く流れたり、表面張力でコップの上端からはみ出してあふれそうな水がいったんこぼれ始めると一気に減る、といったイメージが大事になってきます。

微調整と完成

水の中央部だけを飲むと音がしない代わりに水がこぼれ、周縁部まで飲むとすべて飲むことができるが啜る音が発生してしまう、ということを今まで見てきました。この両極端の中間で、啜る音もほぼ発生しないし水も落ちない、という場所(=口を開ける適切な大きさ)を見つけることができれば、この記事の目的は達成されます。

これを見つけるにあたってさっきの水の性質が役に立ちます。結論から言えば、ほどよい大きさに口を開けておけば、

①口の開いている部分はほとんどが水で満たされる(表面張力)

②口より外側に来た水も、吸い込まれる水に引っ張られてくる(粘度)

という二つを満たすことができます。これはもう個人の感覚で見つけていただくしかありません。ただし啜るほうから出発するのはリスクが高いと思うので、中央部だけ飲んでいる状態から徐々に口を開ける大きさを広くしていき、水を張ったままにしておける最大の大きさを見つける、というのがいいと思います。たまに空気が入ってしまう程度なら、周りに聞こえるほどの啜る音は発生しないので、ギリギリよりちょっと大きめを狙うくらいがいいのではないでしょうか。また、口を開けすぎて隙間ができるのは、啜る音が発生する以外にも、せっかく吸い込んだ水がそこから漏れてしまうという弊害もあります。唇をどの程度尖らせるかなど、個人差もあると思うのでやはり各自で感覚を掴んでもらうことが大事です(僕としても、より確実に成功する開け方を今後研究していくつもりです)。

開始処理・終了処理

今まで解説していたのは、うまく水をこぼさずに飲めているときの「状態」でしたが、ものごとには始まりと終わりがあります。

飲み始めは意外と難しいです。さきほど水の性質の項で、コップから水があふれるイメージについて述べましたが、これが水を飲むときにも当てはまります。水をこぼさず飲めているのは、言ってみれば水があふれる寸前の状態を常に維持していることになるので、いったん水がこぼれ始める、あるいは最初からこぼれた状態になっていると、あとから修正するのは簡単ではありません。なので、最初だけは多少啜る音がするのを覚悟で、水をこぼさないことを最優先にして強めに吸い込み、だんだん吸い込み方を弱めていって口の内側を水で満たしていく、という感じでやると上手く行きます。

水を飲み終わるタイミングについては、口を閉じる前に水を止めて最後の一滴まで吸い切れれば大丈夫です。これが決まった時の快感は格別です。唇についた水が顎のほうに落ちないように下を向き、唇の隙間に水を這わせておくといったような技術もあるので研究してみてください。

補足

大枠は以上ですが、知っておいたほうがよさそうな細かい知識を述べます。まず、水流の不安定性は少ないほうがいいので、できるだけ低い位置つまり水が出ている場所に近い場所から飲むようにしたほうが成功しやすいでしょう。水勢も強いほうが飲みやすいですし、これも近いところから飲んだほうがいい理由になります。ただ、あまりにも近いと見た目が悪いので、通常の位置でもできるよう精進しましょう(僕もまだまだです…)。また、水流が斜め向きに出ていて広がっている場合などは、それと平行な角度になるように口を開けたほうがいいかもしれません。

ちなみに一滴もこぼさないなどと述べてきましたが情報科学科の冷水機は最初に出る水がぬるいので3秒間くらいは飲まずに捨てています。あと、こぼさずに飲めることをとある友達に自慢したら彼もできるらしく、彼は水流の頂上付近で下唇を出して飲み、落ちてくる水を全て下唇で受け止めるという方法を取っているらしいです。ほかにもやり方があるかもしれませんね。

おわりに

以上、一滴もこぼさず冷水機から水を飲む方法について解説しました。自動販売機の普及や衛生面のイメージから駅などでは冷水機の撤去も相次ぐ昨今ですが、僕自身は周りにある冷水機が撤去されないことを願い、水をこぼさないように飲み続けたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

Youtube名演探訪シリーズ#2 - フォーレ/ヴァイオリンソナタ第2番

第2回は近代フランスの作曲家、ガブリエル・フォーレを扱ってみる。

ヴァイオリンソナタについては、1番のほうがロマン派的なわかりやすい作品で、フォーレの代表作の一つとして知られるが、1番やレクイエム、子守唄、『夢のあとで』はいずれも1870年代で、実はフォーレの有名な作品は初期のもののほうが多い。中期で有名なのはせいぜいペレアスとメリザンド、そして後期には広く愛好される作品は一つもないのである。

その理由はヴァイオリンソナタの1番と2番を聴き比べても明らかであろう。1番は和声が比較的単純で、そのぶん旋律の形も聴き取りやすく、所々にある意外性の高い転調はロマン派的情緒を感じさせて程よいアクセントとなっている。一方、1番の作曲から実に40年も経って書かれた2番は、転調の頻度と予測不可能性が大幅に増し、しかも書法は簡潔になるため、なんとなく聴いていると、特に耳障りなところはないのに理解もできないという、ある意味では訳わからない(ということはわかる)現代音楽を聴くより厄介な結果になる。その不思議さに惹かれてなんとなく聴き込むうちに良さに気づいた、というファンは多いだろう。僕自身、10回くらい聴いて楽譜を見るまでは1番のほうが好きだった。ヴァイオリンの演奏効果だけを聴いているとこの曲の良さは一生分からないだろう。

この曲は、多くのフォーレの後期作品と同様、明確な"聴きどころ"のようなものはあまりなく、頻繁な転調を支えるピアノ・ヴァイオリン双方の絶妙な音並び自体に芸術的価値がある。楽譜を見ると、CisからDesへのタイは当たり前という奇怪な異名同音転調、臨時記号の嵐で、ここからあの清純な響きが生み出されているのかと驚くことうけあいである。個人的には、古典和声の範囲を意図的に逸脱しているこの曲の、「綺麗なんだけど何かが足りない」感じが、天国のようなものを連想させるというか、超越的に聴こえるというか、人間が書いたとは思えない感じがする。1楽章展開部などはあまりにも調が落ち着かず、ほとんどワーグナーの無限旋律を思わせる箇所もある。

フォーレの唯一の弱点はコーダの盛り上がりで、曲に高揚感を与えるにはどうしても単純明快な和声が要るので、それを回避したい気持ちとの葛藤があったのだろうと察する。また、曲にあまり断絶を作りたくない作曲家なのでその点でも相性が悪い。結果として、テンションの上がるきっかけをつかめないで終わるようなコーダが多く、フランクのソナタ知名度で負けるのはそのあたりも関係している気がする。コーダ以外の部分の隙のなさは素晴らしく、静かに終わる2楽章などはまったく1音たりとも無駄がないと思わせる譜面の一つ。ぜひ一度は楽譜を見ながら聴くことをお勧めする。

以上のような観点から、聴き比べでは繊細な和声をどれだけ感じながら弾けているかを重視する。ソリストについては音程は大事だが特別な技巧は必要なく、過剰なポルタメントテンポ・ルバートフォーレの楽譜のシンプルさを消してしまうので減点する場合がある。ピアノもかなり重要で、和声への寄与でいえばヴァイオリンより大きいし、正確性はもちろん、"伴奏"にとどまっていないことを求めたい(ただし聴き比べ評価では便宜的にこの用語を使う)。

 

 

 

クリスチャン・フェラス/ピエール・バルビゼ

1953年(モノラル)と1964年(ステレオ)の演奏がある。この曲の参考にすべき演奏としては最も古い部類に属するだろう。

1953年

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録音 ★★★☆☆

音程 ★★★☆☆

音色 ★★★☆☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★★★☆

総合 ★★★☆☆

録音はあまり良くなく、ピアノの調律も低い。当時としては技術レベルはそこそこ。1964年版よりポルタメントやルバートが多い。もう少しリズムに正確なほうが好きかな…音色は比較的均質で、全ての音にニュアンスをねじりこもうとしないあたりは時代を感じさせる。ミスもあり、より完成度の高い1964年盤があるのでおすすめ度は下がる。

1964年

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録音 ★★★★☆

音程 ★★★★☆

音色 ★★★★☆

伴奏 ★★★★★

解釈 ★★★★☆

総合 ★★★★☆

当時はもちろん今でもかなりマイナーなこの曲をたった11年しか空けずに再録するというのは気合が感じられる。ミスも少なく、技術面は申し分ない。1953年とは違いテンポはかなり正確である。フェラスは断固として音にアタックをつけようとしないようで、細部にこだわりすぎない点は変わらない。ピアノは明晰で、さすがに名コンビと言われただけのことはある。

無駄がなく、曲の全体像をよく捉えており、半世紀経ったいまでも十分通用する演奏。

 

 

ダニエル・ギレ / ギャビー・カサドシュ

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録音 ★☆☆☆☆

音程 ★★★☆☆

音色 ★★★☆☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★★☆☆

総合 ★★★☆☆

こもったような音で、一聴して明らかに古い録音である。速めの演奏。技術面はそこまで悪くない。フェラスのものとは違い、アタックや音の切りなど細工が多いが、耳障りというわけでもない。ピアノはもう少し細かい音を聴かせてほしいかな…録音の問題かも。

 

ドン-スク・カン/パスカル・ドゥヴァイヨン

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 (8曲目~)

録音 ★★★★☆

音程 ★★★☆☆

音色 ★★★★★

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★★★☆

総合 ★★★★☆

この曲はヴァイオリン(特にE線)の音色がピアノから浮きすぎると美しくないが、この演奏の音色は比較的理想に近い。NAXOSなので超一流の技術的完璧さはないが、全体的に無駄がなくすっきりしていて好感が持てる演奏。

 

アルテュールグリュミオー

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録音 ★★★★☆

音程 ★★★☆☆

音色 ★★★☆☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★★☆☆

総合 ★★★☆☆

美音などと言われるが、主張が強すぎてこの曲には合わないと思う。音程もいまいち良くない。ちなみにyoutubeにはないがガロワ=モンブラン/ユボーの演奏も同様。

 

シュロモ・ミンツ/イェフィム・ブロンフマン

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録音 ★★★★☆

音程 ★★★★★

音色 ★★★☆☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★★☆☆

総合 ★★★☆☆

最初に聴いたこの曲の演奏。この人も美音と言われ、よく言えば艶のある、悪く言えば油っこい音なのだがこの曲だと悪いところが出る気がする。音程は良い。ブロンフマンのピアノは上手いが、安定しすぎてかえって乾いて聴こえる気もする。

 

アリアドネ・ダスカラキス/ログリット・イシャイ

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 (6曲目~)

録音 ★★★☆☆

音程 ★★★★☆

音色 ★★★★☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★☆☆☆

総合 ★★☆☆☆

録音がややオフ気味か。ヴァイオリンはそう悪くないのだが、テンポが速めなのと、ピアノのノンレガート奏法のせいか、どうしても忙しないあるいは窮屈な気がしてしまう。 もう少し遅くしてミスタッチを減らしたほうが良い。

 

 

オーギュスタン・デュメイ/ジャン=ィリップ・コラール

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録音 ★★★★★

音程 ★★★☆☆

音色 ★★★★☆

伴奏 ★★★★☆

解釈 ★★★★★

総合 ★★★★☆

遅めの演奏で、個人的には好きなテンポである。情熱的だが、情熱の入れ方が曲の色彩をよく捉えている。ルバートは許容範囲ギリギリだがそこが良い。音程は、全体的に悪いわけではないのだが、2楽章の良いところで2箇所くらい完全に半音違う所があり残念。解釈としてはほぼ完璧なだけに惜しい。

 

 

ヨセフ・スーク/ヨセフ・ハーラ

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録音 ★★★★★

音程 ★★★☆☆

音色 ★★☆☆☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★☆☆☆

総合 ★★☆☆☆

音色が鋭すぎるし、音程も上ずっていて落ち着かない。表情の付け方も独奏の譜面の音高だけにとらわれたものに思える。

 

 

ジノ・フランチェスカッティ/ロベール・カサドシュ

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録音 ★★★☆☆

音程 ★★★★☆

音色 ★★★☆☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★★☆☆

総合 ★★★☆☆

往年の名コンビである。技術面にあれこれ言うのは野暮というものだろう(評価は低くしてるけど…)。速めの演奏が好きな人には良いかも。調律が現代よりほぼ半音高いのでエンハーモニック転調する場所が違って聴こえて新鮮。

 

 

テディ・パパヴラミ/ネルソン・ゲルナー

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録音 ★★★★☆

音程 ★★★★☆

音色 ★★★★☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★★★★

総合 ★★★★☆

強弱の付け方などが細部に至るまで神経質なほどで、この曲にかける並々ならぬ気迫を感じる演奏。その全てに賛同できるかはさておき、何も考えていないような演奏よりよほど聴く価値がある。3楽章の再現部の推移主題でピアノに主旋律を譲るときの音量など、聴いていて納得させられる箇所があちこちにある。1、2に比べて3がかなり速いなど、マクロな構成にもオリジナリティーがある。2楽章などで一部リズムが乱れる伴奏は少し残念なのと、強弱をつけようとしすぎて弓の動きが不安定になっている場所がたまにある。

 

 

Krzysztof Smietana / John Blakely

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録音 ★★★☆☆

音程 ★★★☆☆

音色 ★★☆☆☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★★☆☆

総合 ★★☆☆☆

カタカナ転写は調べても出てこなかった。ピアノと溶け合わない、好きじゃない音色の演奏。ヴァイオリンの方が近くに立っているように聴こえるような録音の仕方も個人的にはダメだと思う。あと、この曲の独奏譜面のオクターヴの使い方は褒められたもんじゃないが、だからといって音程が悪くてもいいわけではない。

 

 

ユディト・インゴルフソン/ウラジーミル・ストウペル

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録音 ★★★★★

音程 ★★★★★

音色 ★★★★★

伴奏 ★★★★★

解釈 ★★★★★

総合 ★★★★★

音程・音色・録音など申し分ない。ミクロな部分の解釈が素晴らしく、1楽章の第二主題直前で同じ音型が半音ずつ下がりながら3回繰り返されるところなどの色彩の付け方は驚くべきものである。10分近くある2楽章も、憂鬱の中に至高の美しさがある。第二主題の最後などはもう少しだけ盛り上がっても良い気がするが再現部との対比としては納得できるし、★★★★★は揺るがない。フォーレ愛好家なら絶対に聴くべき名盤。

 

ピエール・アモイヤル / パスカル・ロジェ

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録音 ★★★★★

音程 ★★★★★

音色 ★★★☆☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★☆☆☆

総合 ★★☆☆☆

よく知られたメンバーであり、技術的には問題ないが、このようなポルタメント・ルバートはいずれもフォーレ(の少なくとも後期作品)には過剰だというのが僕の個人的な感想である。とはいえピアノが案外音を間違えている気もする。そして独奏と音楽性が合っていないような気もする。

 

ピエール・アモイヤル / アンネ・ケフェレック

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録音 ★★★★★

音程 ★★★★★

音色 ★★☆☆☆

伴奏 ★★★★☆

解釈 ★★★☆☆

総合 ★★★☆☆

さっきよりテンポが速い分、ルバートはマシである。だが逆に、強い音を出そうとしてかすれたようになってしまっている場所が多く、技術的に問題がある。伴奏はさっきのより良い気がする。

 

 

ルノー・カピュソン / ニコラ・アンゲリッシュ

 

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録音 ★★★★☆

音程 ★★★★☆

音色 ★★★☆☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★★★☆

総合 ★★★☆☆

 こういう録音はなんか現実感がありすぎて合わない体になってしまった。音がよく聴こえているとは思うんですが…。音楽的センスはまあまあだと思うが、後押し気味の音色が無駄な凹凸を作っているように感じるし、小規模なミスが多く詰めが甘い。3楽章冒頭とか…伴奏もちょっと音の間違いが多いんじゃないですかね。

 

ピエール・ドゥーカン / テレーズ・コシェ

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録音 ★★☆☆☆

音程 ★★★★☆

音色 ★★★★☆

伴奏 ★★★★☆

解釈 ★★★★★

総合 ★★★★☆

1957年録音で、ノイズが多く音は良くない。しかし音色は堂々として厚く、細部の歌い回しにも情感がこもっている。展開部になると緊張感もあって飽きさせない。細かいミスはあるが曲を台無しにするような部分は少ない。録音が良ければ★★★★★だったかもしれない名演奏。

 

ジェラール・プーレ / ノエル・リー

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録音 ★★★★☆

音程 ★★★★★

音色 ★★★★☆

伴奏 ★★★★☆

解釈 ★★★☆☆

総合 ★★★☆☆

テンポ感としてはインテンポなのにも関わらず、音楽の流れが悪く、何がしたいのかよくわからない。その場で譜読みをしながら演奏しているように聴こえてしまう。

 

 

樫本大進 / エリック・ル・サージュ

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録音 ★★★★☆

音程 ★★★★☆

音色 ★★☆☆☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★☆☆☆

総合 ★★☆☆☆

1楽章など音を切ったり跳ねたりと装飾が多すぎて別の曲に聴こえる。鋭い音色も含め、この曲の演奏においてヴァイオリンという楽器の特性を前面に出しすぎるのは得策ではないと思うので評価できない。

 

 

ローラ・ボベスコ / ジャック・ジェンティ

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録音 ★★★☆☆

音程 ★★☆☆☆

音色 ★★★☆☆

伴奏 ★★☆☆☆

解釈 ★★☆☆☆

総合 ★☆☆☆☆

誰だか知らないが練習不足が露呈した演奏である。

 

Pierre Fouchenneret / Simon Zaoui

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録音 ★★★★☆

音程 ★★★☆☆

音色 ★★☆☆☆

伴奏 ★★★☆☆

解釈 ★★★☆☆

総合 ★★☆☆☆

ずいぶんと遠い録音である。音色・ヴィブラートの幅ともに好ましくない。

 

 

まとめ

イチオシはユディト・インゴルフソンの演奏である。次点でドンスク・カンとデュメイとフェラス新盤、音質が悪くてよければピエール・ドゥーカンもぜひお聴きいただきたい。マニア向けにはテディ・パパヴラミを挙げておく。

2022/12/22追記 最近考えが変わってきて、ピエール・ドゥーカンがイチオシな気がしてきています。音質は悪いですが素晴らしい演奏です。。音が清潔で綺麗。その他はあまり変わらず。インゴルフソンやドンスク・カンもやはりなかなかです。デュメイはやや下げたいかも。

他は有象無象。グリュミオー、ミンツや樫本なんかは知名度のある盤だが個人的には音色に難があると思う。それが気にならない人は音程などを参考に(あるいはただのリンク集として)見ていただければと思う。

クラオタ的"This Is ARASHI"全曲レビュー①

僕はクラシック音楽が好きで、ほとんどクラシックしか聴きません。それはもちろんクラシックのほうが良いと思っているからです。でも、聴かないのに嫌いと言っているのでは、バルトークストラヴィンスキーを全く訳が分からないといって毛嫌いし、ショパンベートーヴェンばかりを有難がるショボいクラオタと同じです。嫌いと言うならば、ちゃんと真剣に聴いて、どういう曲なのかをある程度理解して、それからであるべきだと思います。もちろん本当に心底訳が分からなければ仕方ありませんが、それは"嫌い"とは違うはずですし、幸いなことにJ-POPの大半は調性音楽なのでそういうことはありません。ちなみにこの前聴いたブーレーズのピアノ・ソナタ2番は分かりませんでした。1楽章が終わる10秒前くらいに、この曲そろそろ終わるな、と思ったくらいです。ショボいクラオタでごめんなさい。でも嫌いとは言いません。言いながら聴いてたらちょっと分かってきた気がしてきた。寛容さは大事です。

というわけで、僕は寛容なので、よく考えたらポップスの中でもたまにはいいなと思う曲があるわけです。その数少ない例が嵐の曲で、なぜかというと人は何回か聴いた曲を好きになりがちで、僕が何回か聴いたJ-POPといえば家にCDがある嵐くらいしかないからです。ああ一応NEWSのも一枚あったっけ。でも嵐のほうが有名だしちょうど最近配信も開始されたしってことで、聴きます、"This Is Arashi"。

大まかな方針としては歌詞は専門外だしそもそも聴き取れないことが多いので特に印象が強いもの以外は評価対象にしません。歌の技術についても同様です。嵐はみんな歌が上手いのでミスとかを気にしなくてよいのはありがたい限り。評価は5段階でつけます。

たまにF-Durとかなんとか書いてありますが、絶対音感のない人のほうが多い以上は本質的ではないのでそこは分かる人だけが読めば良いと思います。

 

Turning Up

★★☆☆☆

最初からいきなり聴いたことない、しかも今までのイメージにない曲が出てきて面食らった。リズム感は少なくとも個人的には嵐っぽくないと思ったし、ビートが変わってサビに入るところの高揚感はなかなかだったが、いざ入ってみると繰り返しが多く単調であまりおもしろくなかった。サビの最後の方、ここで同じ音型二回繰り返すだろ?て思ったら本当にそうなったときは興ざめした。とはいえこれはよく考えてみるとトラブルメーカーのサビの印象が残っていたせいかもしれない。Bメロも同じ音型の繰り返しであんまり好きじゃない。曲自体が短いし、飛び跳ねるようなリズム感を大事にしていて歌詞の密度が高くないので、全体の情報量が少ないと思った。

 

Happiness

★★☆☆☆

小学校の運動会の応援歌になったりして割と馴染みはある曲だがどうも暗くて好きになれない曲の一つである。そもそも第一印象が応援歌なのがふさわしくないのかも。Happinessって感じの曲じゃなくないですか?Aメロの音域が低すぎるだろ。3度のハモりもうざったい。Bメロは改めて聴き直してみると意外とまともだった。サビに向かって盛り上げていく雰囲気は出ているし旋律線も収まりが良い。さてそれでいよいよサビに行こうというところで、僕がポップスを嫌いである大きな理由の一つ、"モチベーションの分からない転調"が現れる。もちろんこれが好きな人もいるので個人の好みだとは思うが、少なくとも僕は、なんでそこでF-DurじゃなくてDes-Durに行くんだ?フラットの数がこんなに増えてHappyなハズがないだろう、と思う。というかサビ自体も短調の響きを含んでいるように感じる。そんな転調をするからサビが終わった後の調の戻り方も気が抜けたようになってしまう。だったらそのままの調で次に行けばいいのに。

あーちなみにポップスが嫌いな理由に挙げましたけどクラシックでもモチベーションの分からない転調をする曲はあるし、そういうのは嫌いです。

2番の後の間奏に行くところで気が抜けるのはいいですけどね。間奏だから。

歌いやすさと曲の良さに負の相関がありそうってツイートしたけどこの曲はまさにそれですね。

 

Love so Sweet

★★★★☆

これも知ってる曲。たしかこの曲で運動会の何かのダンスを踊った。

上記と同じくちょっと気に食わない転調だが、そればかり言っていても仕方がないし、導入も後処理もHappinessよりちゃんとしている。

サビが結構良い。Aメロが拡大された5度跳躍のリズムと「ずっとずっと」の相性がよく、「きっと」の「き」に割り当てられた最高音Gisのアクセントも効いている。締めくくりの「信じることが全て」に落ち着く感じも説得力がある。最後のサビの「信じることが全て」の2回目のベースラインにあるFisはちょっと安直な気がするけどまあいっか。yeah yeah yeahで遠ざかっていく感じもよくできてると思いました。

 

One Love

★★★★☆

曲名には聞き覚えがなかったが家のCDにある曲だったようで、聴いたことがあった。

これも割といい。Aメロの落ち着きもBメロの浮遊感も良いし、サビの転調が滑らかで曲の内容とマッチしている。サビも、ちょっとしゃくりが耳につくけど良い旋律だと思う。

 

A・RA・SHI

★★★★☆

超有名なデビュー曲で、これをこき下ろしたら友達が減りそうだなあ…というところだが心配は無用、これはそんなに悪くない。

冒頭のちょっと音程がはっきりしなくて雑然とした感じ、こういうの何ていうんですか?たぶんちゃんとした用語があるんだろうけど聴かなさすぎてわからない。底抜けに明るいとまでは言わないけど、無用の暗さがない曲で、減点要素が少ない。サビのコードも含めてそこまで着飾らない感じで、歌唱力で勝負という感じがする。それを可能にするだけの歌唱力があるのは素晴らしいことである。全体として、デビュー曲にふさわしい曲だと思った。

 

Monster

★★★☆☆

これもHappinessと同様あまり好きじゃない曲。Es-mollの暗さから逃れられない不完全燃焼な曲という感じがするし、サビのフレーズ感がぶつ切りで単調だと思う。まあ曲調は「怪物くん」の主題歌としてなら受け入れられるかな。曲として独立するには弱い気がする。

 

Truth

★★★★★

これは良曲だと思う。なんとカラオケで歌ったことがある。Happinessとは逆に、曲が良いほど歌うのが難しいと感じさせられる作品の一つ。

薄い序奏からまさに「ゆらりゆれる光ひとつ」のように小刻みに湧き出る低音域の旋律が更に音域を下げていくのが面白く、3度のハモリもうるさくない歌い方。Bメロの「こぼれ落ちた涙のあと 凍えそうな涙の色」のバックコーラス?(またもや用語がわからない)も、多声部の音楽をよく聴く人間にはうれしい仕掛け。これがそのままサビの予告にもなっているんですね。

Bメロとサビの境界にある「悲しみ」の忽然とした感じも評価が高いし、サビの旋律も音域が広く、一旦下がってから「それは まるで」で動き出すのは歌いだしのところを彷彿とさせる。最後の「ままで」で裏声になって遠くに消えていく感じも、裏声で逃げた感じが全然無いので上手くやったなと思った。てか地声で歌おうと思えば歌えるか。

低音域と高音域などの対比、遠近感に聴き応えがある傑作。

 

復活Love

★★★☆☆

第1曲以来の知らない曲。これも第1曲と同じであまり嵐のイメージじゃないと思ってしまった。もしかしたら知ってる作曲家の聴いたことない曲を「イメージと違うね」とさも知ったように表現してしまうショボいクラオタに成り下がっているのかもしれない。でも冷静に考えて作曲者が違う可能性があるから仕方ない。

前奏はちょっとオシャレだしAメロのコード進行が単純なのもむしろJ-POPぽくないからいいけど、最近「王道進行」という概念を知ってしまってBメロはもろにその響きがしますね。

Bメロ前後は一聴してフレーズ感がつかみにくいから意外といい曲なのかも。サビはちょっとしつこいかなあ、コードはAメロのあたりと関連してるようだから(直前に冒頭と同じ和音が鳴る!)、そんなに複雑にはしなくていいけど同じ音型の繰り返しごとにもう少しだけ変化があってもいい。

あとはひとつながりの言葉なのにフレーズが切れ過ぎな感じはしました。

 

WISH

★★☆☆☆

知ってる曲。三拍子系の拍子は好きだけど、まず第一にサビが間延びしてて魅力がないと思う。ハモリがないと耐えられない。Bメロ2の「君はそんな」「僕じゃまるで」に伴奏が応答するやつ、これはサビの真ん中に入ってる伴奏の「ソラシレド#シ」と関連する音型なのかな?まあそういう3拍子の良さは好きだしこの曲はいまいちです。

 

Brave

★★☆☆☆

知らない曲。これはイメージと違うなとは思わなかった。全体に金属音がガサガサしてうるさい音響。こんくらい歌が聴こえにくい方が喫茶店のBGMとかには良い気もする。でもどこを聴かせたいのかよくわからない曲だと思った。旋律・和声は可もなく不可もない。ちなみに演奏時間が4分33秒だった。

 

Guts!

★★☆☆☆

冒頭がなんか結婚行進曲みたいでウケました。AメロはつまんないけどAメロだからいいです。「こころがざわめいてた」のキモい旋法はちょっと評価できる。Bメロの転調は普通かと思いきや「僕らは」のところは意外性があって面白い!Fisのドミナント「叫」〜んで、H-durに行ってサビ!かと思いきや…え?Dの音が…H-moll?この曲は嫌いです。H-mollに行くならさっきの「僕らは」の和音は要らなかったと思います。わかって聴けばそんな変じゃないかもしれないけど、クラシックでもポップスでも、こういう信頼関係を破壊するような和声は嫌いです。「常識なんて吹きとばせ」?そういうことじゃないだろ。

 

夏疾風

★☆☆☆☆

またつまらないAメロと王道進行の組み合わせか。却下。

 

アオゾラペダル

★★★☆☆

久々に知ってる曲。嫌いだと思ってたけど、ちゃんと聴くと、ゆっくりで推進力がないなりに良い曲に仕上がっていると感じた。Braveみたいに「綺麗な色を塗りすぎ」てない。Wikipediaによると「嵐のシングル表題曲では最も演奏時間が長い」んだそうです。

減点要素は「空を飛べ   そうなくらい」ですかね。

 

A Day in Our Life

★★★☆☆

One Love以来の、"実は知ってた"曲。延々とオブリガートのラップが鳴り響く、風変わりな曲(これもそういうジャンルを知らないだけだとは思う)。ユニクロとかで流れてそう(こなみ)。一応AメロBメロサビはあるんですね…難しい。ちょっと面白い曲です。

 

言葉より大切なもの

★★☆☆☆

普通の曲だが、Wow wowの比重が大きすぎる気がするのとサビ冒頭の「ファ#ーファ#ーミレドレ」のファ#の主調が強すぎる気がするので減点。

 

とまどいながら

★★★☆☆

普通。サビ直前と真ん中にある半音階進行が取ってつけたようで好かない。

 

感謝カンゲキ雨嵐

★★★☆☆

3+3+2のリズムが印象的だがサビは単調だと思う。ラップの前の間奏がちょっと面白い。

 

Bittersweet

★★★★☆

知らない曲だったが良かった。こういうふうにBメロが遠い調に行ってサビで戻ってくるほうが個人的に聴きやすいです。メロディーの流れも変化が多くて飽きません。サビからAメロに戻ってくるところはもうひと工夫あってもいいかな。落ちサビから大サビに入るときの「誰よりも 君を」を言い切れずに次に行くフレーズ感は高評価。

 

初めて未聴の良い曲に出会ったところで5000文字に達したので一旦止めて公開しておこうかと思います。

王道進行って本当に至るところにあるんだなあとか、Bメロってこんなに律儀に毎回のように書いてあるもんなんだ、とか落ちサビと大サビっていう用語とか、ポップスについての理解が深まった気がします。まだ全体の1/4くらいですがだんだんコンパクトに書けるようになってくる気もするのであと2記事分かな。次回もお楽しみに(する人いるのか?)。

YouTube名演探訪シリーズ#1 - プロコフィエフ/ピアノソナタ第8番

 前回の記事ではYouTubeでクラシックの演奏を効率よく探す方法を書いた。ただ、本当にいろいろな演奏があるので、何が良かったか、あるいは良くなかったか、だんだん覚えきれなくなってくる。どう検索したら出てきたかなども忘れてしまうことが多い。そこで、自分の好きな曲の演奏をYouTubeでひたすら探してまとめる記事を(自分のためにも)書こうと思い至った。名付けて"YouTube名演探訪"。丸付き数字ではなく#で番号を書いたのは50回を超えてやるという意志の表れである。主に、そこまで大量の動画が載っていない、比較的マイナーな曲を扱う予定である。第9の聴き比べなんて無理。長いし、怖いオタクが多い。

第一回はセルゲイ・プロコフィエフピアノソナタ第8番。プロコは大好きな作曲家で、ロミジュリやヴァイオリン協奏曲なんかもよく聴くのだが、ピアノソナタは、優れたピアニストでもあったプロコの才能を一番濃密に味わえる気がして特に愛聴している。好きな順だと今のところ879564321といったところだろうか。他のナンバーも今後登場するかもしれないが、初回は一番好きな8番を扱うことにした。おそらくはこの曲が好きな人の大半と同じく、3楽章の疾走感が一番の魅力だと思うが、2楽章の牧歌的な旋律の良さもプロコならではだし、1楽章の陰影の深さも、わかってきたような、わかってないような…

そして、これも知っている人は知っているだろうが3楽章のコーダがどちゃくそ難しい。その割に7番ほどの演奏効果がないので、それが8番が敬遠されている理由だろうか。ここだけが8番ではないが、全曲を締めくくる部分で、ちゃんと弾けてればとてもカッコいいので、弾けてない演奏は評価が下がりがち。というかこの企画自体、クソ真面目にやったら超時間かかるので、減点方式になる部分はあるかも。では、聴き比べ。なお、youtube公式プレイリストがあるものはそれを優先させ、動画埋め込みの都合で最初に別の曲が来てしまっているものは何曲目からがこの曲かわかるよう注をつけた。

アンドレイ・ガヴリーロフ

www.youtube.com(5曲目〜)

録音 ★★★★☆

技術 ★★★★★★

表現 ★★★☆☆

総合 ★★★★★

最初に聴いたこの曲の演奏。かなりの快速テンポ。超絶技巧で鳴らした人で指回しには定評があるようだが、それにしてもミスタッチがほとんどないので相当練習した、というか思い入れのある曲なんじゃないだろうか。冒頭のアルペジオの1音目の残響が3音目まで残るようなこのテンポはそれだけで曲のイメージをまったく変えてしまうほどの鮮やかな効果があり、クリスピーなタッチと相俟ってプロコフィエフの音並びの楽しさを余す所なく伝えてくれる。ライナーノーツのガヴリーロフ本人の解説にも、「おそらく、プロコフィエフの最も偉大なピアノ・ソナタであるこの作品」との記述がある。私はまったくピアノが弾けないが、他の演奏を聴いた限りだと、たぶんそれくらいの気合がないとこんな凄まじい演奏はできない。ただ、このことが裏付けるのは、知名度的には7番に(もしかしたら6番にも?)劣るこの曲をろくに練習しないで戦争ソナタ3部作(あるいは全集)として録音する多くのピアニストの存在であり、彼らには猛省を促したい。

いくらか問題点もある。まず、カップリングされている7番でもそうだがこの人は指が回りすぎるのに任せて無計画にテンポ設定をしてしまう癖があり、終盤の難所に微妙に加速しながら突っ込んでいき最大の難所で一瞬テンポが落ちるという非常に勿体ないことをやらかす。だったら最初からそのままのテンポでやっても十分速いのに…

また、ライナーノーツでこのピアノソナタの内面的な悲劇性に言及している割に、そういうところでの感情表現が浅い気がする。

それでもこの情熱と圧倒的な迫力(打鍵の強さも世界有数レベルと思われ)は一聴に値する。

上記は90年代の録音だが、1978年の演奏もある。

www.youtube.com

録音 ★★★☆☆

技術 ★★★★★★

表現 ★★★☆☆

総合 ★★★★★

音質はやや悪いが、解釈は概ねそのままで、しかもテンポが不自然に落ちる場所もないので、こっちのほうがいい演奏なのかも。

また、動画もyoutubeにある。

www.youtube.com

もう一回り御年を重ねたころの演奏も(3楽章のみ)。

https://www.youtube.com/watch?v=7VrjWaP9KXs

(なぜかサムネイルが表示されなかった)

後者ではさすがにミスもあるが、いずれも迫力満点で、「指ってこんなに回るんだ…」という謎の感動がある。あと手がめっちゃでかい。この人、手が大きいピアニストとしても有名なようで、ドからソまでとかドからラまで(!)届くという話も見かけた。

なお、コーダ前でテンポを上げるのも最終盤で少し落ちるのもやっぱり何も変わってなくて笑ってしまう。19歳のガヴリーロフに優勝を与えたチャイコフスキー国際コンクールの審査員も今頃呆れているんじゃないだろうか。

 

 ウラディーミル・オフチニコフ

www.youtube.com

録音 ★★★☆☆

技術 ★★★★★

表現 ★★★☆☆

総合 ★★★★☆
これも、終楽章がそこそこ速くてコーダまで持ちこたえた数少ない演奏の一つ。もう少し粒立ってて音が濁らない方が好きかな…。中間部の行進曲調のところは遅め。さすがにガヴリーロフと比べると遅いところの歌い方も丁寧だが、あくまで「ガヴリーロフと比べると」、である。

 

ウラディーミル・アシュケナージ

www.youtube.com

録音 ★★★★☆

技術 ★★★★★

表現 ★★★★★

総合 ★★★★★

この人は指揮でも評価を得ており、プロコフィエフにおいてもかなり信用できる奏者の一人である。少し手が小さいらしく、10度だとグリッサンドになっている箇所もあるが、9度以下の場所では苦しさを感じさせずに弾いていく。細かい強弱の付け方などもやはり上の2つと比べるとセンスがあるし、対位法の処理も明確で、確かな教養を感じる。動画としても楽譜付きでわかりやすくて良い。この動画でプロコフィエフの音の少なさを知ったので個人的には思い入れがある。

ボリス・ベルマン

www.youtube.com知名度がよくわからないが、プロコフィエフのピアノ・ソナタ全集出してる人。3楽章はそれほど速くないし、終盤でテンポは落ちてしまうが、落とし方がそこまで不自然ではなく、遅いかわりにそこそこちゃんと弾けてはいる。1楽章も、速いところは概ねそういう方針っぽい。そんなに悪くない。楽譜ついてるし。

録音 ★★★★☆

技術 ★★★★★

表現 ★★★★★

総合 ★★★★★

 

エフゲニー・キーシン

www.youtube.com

録音 ★★★☆☆

技術 ★★★★★

表現 ★★★★☆

総合 ★★★★☆

動画。相変わらず髪の毛多い。1楽章のゆったりして深みのある音色から引き込まれる。個人的に最近遅い演奏全般が好きなのもあるかも。録音はちょっとフォルテで歪みが出る気もする。まあ映像なんてそんなもんだよね(偏見)。

3楽章は最初からけっこう良いテンポで弾き始める。途中の転調エモいところ遅くするの、気持ちはすごくわかるんだけどここはインテンポのほうがかっこよくない?まあなんというか全体を通して細かい仕掛けが多くて、けっこうハマってるのもある。最後のテンポも割と持ってるしライヴでこれならブラヴォーでしょう。

 

ボリス・ギルトブルグ

www.youtube.com

録音 ★★★☆☆

技術 ★★★☆☆

表現 ★★★☆☆

総合 ★★★☆☆

弾き姿からなんとなく想像できる通りのヘンテコな演奏。どう見てもフォルテって書いてある所をピアノで弾く。技術はそこそこ追いついてるかな。だけどやっぱり3楽章のあそこは遅くなるか…

スタジオ録音もあった。

www.youtube.com

(8曲目~)

録音 ★★★☆☆

技術 ★★★★☆

表現 ★★★☆☆

総合 ★★★☆☆

ちょっとミスは減ったのかな…ほかは同じ。音響が完全に風呂場。

 

マッティ・レカッリオ

www.youtube.com

録音 ★★★★★

技術 ★★★★☆

表現 ★★☆☆☆

総合 ★★★☆☆

あそこは遅くなるか…。もとのテンポだけならガヴリーロフより速いのだが。あまりプロコの和声に共感してない弾き方な気がして好きになれない。ヤブロンスキー的な。

 

エリソ・ヴィルサラーゼ

www.youtube.com

録音 ★★★★☆

技術 ★★☆☆☆

表現 ★★★☆☆

総合 ★★★☆☆

あそこは遅くなった上に弾けないか…。

 

ティーブン・デ・グローテ

www.youtube.com

録音 ★★★☆☆

技術 ★★★★☆

表現 ★★★★☆

総合 ★★★★☆

知らない人だけど3楽章はオフチニコフよりちょっとミスが多いかなというくらいで、健闘している。録音はあまりよくないが、技術としての音色はまあまあ。

 

アレクサンドル・メルニコフ

www.youtube.com

録音 ★★★★★

技術 ★★★★☆

表現 ★★★★★

総合 ★★★★★

プロコフィエフのオタク、っぽい弾き方が良い。その意図を全て表現できるだけの技術があるかというと怪しい部分もたまに。

 

James Giles

www.youtube.com

録音 ★★★☆☆

技術 ★★★☆☆

表現 ★★★☆☆

総合 ★★★☆☆

そもそも日本語のカタカナ読みが出てこないという知名度。凡庸な演奏。

  

グリゴリー・ソコロフ

www.youtube.com(6曲目〜)

録音 ★★☆☆☆

技術 ★★☆☆☆

表現 ★★★☆☆

総合 ★★☆☆☆

音質が悪いから古い録音なのかと思ったら、ただ音質が悪いだけだった。たぶん演奏もあんまりよくない。

 

コンスタンチン・シャムライ

www.youtube.com(9曲目〜)

録音 ★★★☆☆

技術 ★★☆☆☆

表現 ★★★☆☆

総合 ★★☆☆☆

テンポは遅いというわけではないがミスタッチが多く、凡庸以下の演奏。録音もイマイチきれいじゃない。2楽章はまだマシ。

 

ユジャ・ワン

www.youtube.com

録音 ★★★★☆

技術 ★★★★☆

表現 ★★☆☆☆

総合 ★★★☆☆

ライヴ映像で、CD化もされている。最近の指回し系ピアニストである。youtubeにあったコンチェルトの2, 3番などは素晴らしい迫力だったので当然3楽章に期待が高まったが、何の変哲もない遅いテンポでがっかり。ユジャ・ワンであり、ユジャ・ワンでしかないからには、もっと勢いに任せて突っ走ってほしかった。いかにも速く弾いているかのように楽しそうな表情をしているところもマイナスポイント。今後に期待。

 

ケイト・リュウ

www.youtube.com

録音 ★★★☆☆

技術 ★★★★☆

表現 ★★★★★

総合 ★★★★☆

わりとうまかった。3楽章はやっぱりライブだからミスもあるのだが、テンポ感がぶれないからグダってる感じがしないし、ペダリングが上手くて、迫力と音が濁ることのトレードオフにうまく折り合いをつけている。これでミスがなかったらめっちゃカッコいい!と思わせる演奏ではある(そういう演奏自体が割と貴重)。いつかCDを出してほしい。

 

 

サラ・ダネシュパー

https://www.youtube.com/watch?v=Ch4iDssZXPY

録音 ★★☆☆☆

技術 ★★☆☆☆

表現 ★★★☆☆

総合 ★★☆☆☆

知らない人。ライヴ映像。この記事書いてるうちにだんだんミスに寛容になってきちゃったけど冷静に考えて弾けてない。ライヴで(じゃなくてもそうだけど)この曲を弾くのはよほど上手くない限りやめたほうが良い。

 

以下は古めの録音。

スタニスラフ・ネイガウス

www.youtube.com

録音 ★★☆☆☆

技術 ★★☆☆☆

表現 ★★★☆☆

総合 ★★★☆☆

この人の父親のゲンリヒ・ネイガウスが以下で紹介するギレリスとリヒテルの師匠らしいです。

テンポがかなり速い。1も3も。3は正直弾けてないが、ガヴリーロフに匹敵するかちょっと速いくらいの速度。まあ60年代ですから…。

 

エミール・ギレリス

www.youtube.com

録音 ★★★★☆

技術 ★★★★☆

表現 ★★★★☆

総合 ★★★★☆

この曲の初演者。技術ではこんにちの演奏にやや劣る…と思いきや最近の演奏家が真面目に練習しないせいでそんなこともない、というか普通にギレリスが上手い。音質も良い。起伏に富み、不思議な緊張感が支配している。1楽章など特に良い。やはりこの曲の戦争ソナタたる背景を身を以て知っている世代ということだろうか。

 

スヴャトスラフ・リヒテル

www.youtube.com

録音 ★★★☆☆

技術 ★★★★☆

表現 ★★★★☆

総合 ★★★★☆

最後に、プロコフィエフのピアノ・ソナタを語る上では絶対に外せないこの人の演奏を聴いてみよう。完成したピアノソナタ9曲のうち1~6番の初演は作曲者自身、8番はさきほどのギレリスで、残る7, 9がこのリヒテルである。

ああやっぱり冒頭のこの冷たい音(録音のせいもあるだろうが)、リヒテルだなあ…2楽章は優しい感じもする。

3楽章も割といいテンポ。7小節目の音が小さめなのとか、ちょっと最近の演奏と違う。ミスはあるけど、こういうハッキリした音で、ごまかさないピアニストは好き。古臭い拍手の音がまた趣がある。

 

全体として、おすすめはガヴリーロフ、アシュケナージキーシン、メルニコフもまあまあだしギレリスとリヒテルは聴いて損はない。3楽章ならオフチニコフも。

まじで、ダメな演奏聴くと音間違って覚えそうなので注意。

 

※追記

www.youtube.com

録音 ★★★★☆

技術 ★★★★★

表現 ★★★★★

総合 ★★★★★★

この記事を書いたあとに素晴らしい演奏に出会ったので追記しておきます。ユーリ・エゴロフというソ連出身のピアニストで、残念ながら若くして亡くなってしまったのですが、なんとこの8番のリサイタル映像が残っています。3楽章の前半で一瞬楽譜が飛んだような不自然な間があるなど、ミスもありますが、それでもあらゆる面で正統派・超一流の演奏だと思います。安定したリズム感、細かい音符での明確なタッチ、フォルテでも落ち着きのある音色、そしてペダルまで、(まあ僕自身ピアノはできないので詳しいことはわからないのですが、)この曲をこれだけ自然に聴かせるのは並大抵のことではないはずです。

演奏はa Life in Musicという11枚入りBoxのDVD(これ以外の10枚はCD)に収録されています(他にもあるかもしれませんが)。YoutubeにはホワイトノイズがありますがDVDには(ほぼ)ありません。それ以外は概ね同程度の音質だと思います。よく聴くと例えば3楽章開始直前などで直後の音のデータがズレて入ってしまっているのがわかると思うのですが、これはDVDでもそのままです。

総評として、今までのこの曲の演奏では一番か、そうでなくてもかなり上位に入ると思いますし、ホワイトノイズ無しで聴きたい方はこの曲のためだけに買って損はないと思います。

(なんかここだけ敬体になってしまった…)

PCで楽しむクラシック音楽

はじめに

タイトルのとおりです。PCで楽しむってそりゃYoutube見るとか取り込んだの聴くとか今更解説することでもないだろ、と思う人もいるかもしれませんが、快適に聴こうと工夫した結果得たものもあったのでちょこっと紹介します。

Youtubeで探す

やっぱり持ってない曲とか演奏はYoutube探しますよね。最近だとApple Musicとかにめっちゃ沢山あるらしいんですが僕はまだ手を出していません。古い演奏とか無さそうなイメージですし、ちゃんと探せばYoutubeにも結構ありますよ。それに、上の方にはまともな演奏が出てくることが比較的多いです。違法のイメージがあるかもしれませんが著作権切れてるやつ(Deucalion Projectとか)、公式が上げてるやつ(アップロードしたユーザーの名前が〇〇 - トピックになってるやつとか)もあります。コツはGoogleの「動画」から調べるのではなくYoutube内で探すことです。あと公式のを探す場合はSymphony 5 ではなく Symphony no 5 op 100とか入れたほうがヒットしやすい(公式はそのあたりまでご丁寧に動画タイトルに入れてることが多い)です。公式の目印はサムネイルにある綺麗な正方形のジャケットです。楽章一つでも見つけたらほかもあると思うので説明欄から奏者の名前コピって探しましょう。公式以外では一部の楽章しか無いのもあるかもしれませんね。あと楽譜付きの動画もいいですね。あれでハマった曲多数です。

音質は動画右クリックして詳細統計情報のCodecsにOpusって書いてあったら一番良いやつです。でもそれよりもともとの録音の質のほうが大事です、当たり前ですが。

気に入った曲があったらCDを買いましょう。買わなきゃ。

アタッカ付きの曲の再生

シベ2みたいに盛り上がってアタッカで次に行くとか、オペラ・バレエみたいに細かく場面が分かれてる曲は、ダメな動画再生プレイヤー(Gr○○ve Musicとか、VL○とか)で聴くとトラックごとにブツブツ切れて堪ったもんじゃありません。おすすめのプレイヤーはMPVです。オープンソースで、WindowsLinuxもあります。ただこれでもNASとかに入れててファイルの読み込みが遅いときは切れちゃうかもしれませんのでmpv.confに
cache=yes
demuxer-max-bytes=123400KiB
demuxer-readahead-secs=20
prefetch-playlist=yes

とか書いとくと良いと思います。細かいオプションの効果はよくわかりません。prefetch-playlist=yesだけでも動いたっけ?merge-files=yesは要るんだっけ?まあいいや。mpv.confはWindowsならmpv.exeと同じフォルダに入れます。LinuxGNOME MPVとかは設定の項目でファイルを選んでください。

Youtubeファイルシステムとしてマウント

GitHub - rasguanabana/ytfs: YouTube File Systemってのを使うとYoutubeをフォルダみたいに使えます。mkdirでフォルダを作るとそのフォルダ名の検索結果が入ったフォルダができるの、賢いですね。これとMPVを組み合わせるとyoutubeに別トラックとしてアップされててもアタッカで聴けます。でもトラックの切り方が雑でうまくつながらなかったりする。

おわりに

何の記事だよこれ↑

NVIDIAドライバのLinuxへのインストール・トラブルシューティング総まとめ

はじめに

LinuxNVIDIAGPUの機能をフルに使うためにはNVIDIA公式のドライバを入れる必要があります。ただ、これがなかなか一筋縄ではいかず、設定をいじっているうちに画面がつかなくなって混乱したり、解決策を調べようとしても情報が錯綜していたりしてとても苦労するので、自分なりにまとめてみました。今回の環境はIntel+NVIDIAのデュアルGPUのノートパソコン(Windowsプリインストール、セキュアブート有効)という個人用PCでは考えられる限り最も"過酷な"環境だったので、広範なトラブルが発生しましたが、その分いい経験になったかなとは思います。比較的系統立てた感じにしたつもりですが、試行錯誤の過程でインターネットで得た情報の9割方が役に立たなかったことを考えるとそんなに全員に当てはまるとも思えないので話半分に受け取っていただければ幸いです。あと、長いです。なお環境はUbuntuLinux Mint)ですが他のLinuxでもあんまり変わらない気がします。

予備知識

GUIが起動しないことがあるかもしれないので、テキストモードで一通りの操作(viとか。僕はiと:wqと:q!しか覚えていませんが)はできたほうがいいと思います。grub画面でのカーネルパラメータの編集、grepなども頻出です。自信がない人はそもそもトラブルに巻き込まれないよう、各段階を慎重にやりましょう。

概観

NVIDIAのドライバを正しく動作させるまでの段階をいくつかに分けてみます。

0.NVIDIAのグラフィックボードが搭載されている

1.NVIDIAのドライバーがLinuxが認識できる場所にインストールされている

2.NVIDIAのドライバーが起動している

3.Xorg周りが正しく設定されている

前の段階がうまく行ってないのにあとの方に関する設定をしても当然うまく行きません。うまく行っているかの確認方法などと合わせてそれぞれの段階のやり方を見ていきます。

0.NVIDIAのグラフィックボードが搭載されている

当たり前ですが念のため。デバイスがなければそもそもドライバを入れる必要もありません。確認方法は

lspci | grep VGA

です。今回の環境はIntel+NVIDIAのデュアルGPUなので

00:02.0 VGA compatible controller: Intel Corporation Device 3e9b
01:00.0 VGA compatible controller: NVIDIA Corporation GP107GLM [Quadro P600 Mobile] (rev a1)

と出力されます。自分のPCが実はデュアルGPUだった、ということもあるかと思うので状況の正確な把握のためにも結果は見ておきましょう。最初の数字や細かい型番などはとりあえず気にしなくて大丈夫です。

 1.NVIDIAのドライバーがLinuxが認識できる場所にインストールされている

環境によっては(例えばセキュアブート無しでNVIDIAGPUしか入っていないデスクトップPC)ここの操作をすれば自動的に第3段階まで完了するかもしれませんが、分けて解説していきます。

まずは確認方法からです。modprobe nviあたりまで打ってからTab(補完)キーを押したときに

nvidia-drm nvidia-modeset nvidia-uvm nvidiafb

と4つか5つくらい出てくれば正しくインストールされています。nvidiafbだけしか出てこなかったりしたらダメです。ちなみにこれらは.koというファイルの形で/lib/modules以下に入っています。通常はnvidia-drmなどは/lib/modules/x.xx.x-xx-generic/kernel/drivers/video以下です(が/lib/modules/x.xx.x-xx-generic/update/dkmsに入ってるみたいな情報も見かけました)。

ではインストール方法を見ていきます。大きく分けて①.debパッケージを使うNVIDIA公式サイトのインストーラを使う の2つがあります。基本的には①を推奨します。パッケージが利用できない場合は②しかありません(RHEL系などもこっち?)。

①で、かつセキュアブート無効の場合は一番簡単で、普通にaptでインストールすれば何事もなく終了します。

セキュアブート有効のときはインストール終盤でセキュアブートのためのパスワードの入力を求められます。インストール後に再起動するとPerform MOK Managementというような青い画面(細かいところや色などは違うかもしれませんが)が出てきます。ここでContinue Bootを選択すればそのままブートできるのですがこれだとドライバは動作しません(ここで結構ハマりました)。必ずEnroll MOKを選択し先程入力したパスワードをここで入力します。このパスワードはたしか今後二度と使うことはないはず。

 

次に②です。まずdkmsパッケージがなければsudo apt install dkmsでインストールしておきます。入れないでも動いたという記事もありますが、dkms使ったほうがカーネルアップデート時に自動で反映されるかなんかで、インストール手順も短くなるので便利だと思います。実際に前述のパッケージによるインストールでもdkmsは使われています(nvidia-dkms-xxxというパッケージがインストールされ、これがセキュアブート時のパスワード入力画面をトリガしている模様)。そして、このタイミングで公式サイトからインストーラをダウンロードしておきます。chmod +xも今のうちにやっておきましょう。実行するのはまだです。

次にnouveauを無効化します。このあたりは調べると結構情報が出てきますがここでも一通り解説します。

lsmod | grep nouveau

を実行し、出力が一行でもあった場合は、

echo 'blacklist nouveau' >> /etc/modprobe.d/nouveau_blacklist.conf

として一旦再起動します(再起動の前にupdate-initramfs -u -k allを実行する必要があるという情報もありましたが少なくとも僕の環境では不要でした。/lib/modprobe.d/*.confに書き込んだ場合は必要なのかも)。もう一度lsmod | grep nouveauを実行して出力がなければ大丈夫です。なお再起動後に画面の解像度が低かったりそもそもGUIが起動しなかったりするかもしれませんが、それはnouveauが正しく無効化できているということなので、焦らずCtrl+Alt+F1とかで仮想コンソールに移動しましょう。どうせこのあとでGUIを無効化することになります。ちなみに今述べた過程を飛ばしてインストールしようとすると、インストーラが代わりに上記の作業をやってあげますよと提案してきます。

さて、ここまで来たらドライバのインストールです。GUIからログアウトしてXを終了し、Ctrl+Alt+F1(F1~F6、どれでもいいです)で仮想コンソールに移動します。そしてインストーラを実行します。注意点がいくつかあるので順番に紹介します。

●The distribution-provided pre-install script failed!と出ても全く気にせず続けましょう。インストールするかどうかの確認として表示されているだけでエラーではないという意見をどっかで見ましたが本当にそんな気がします。だとしたら随分誤解を与える文面です。

●32bit関連のやつは、入れていい?って聞かれたら入れていいと思います。依存関係がダメで32bitのは入れられないけどいい?って聞かれたら入れなくていいと思います。あまり調べていません。

●libglvndが不完全なのでインストールし直しますか?みたいなのはInstall and overwrite existing filesを選んで上書きインストールしてもらいましょう。Ubuntuなら、インストーラ起動前に予めlibglvnd-devパッケージを入れておけばこの表示は出ないのでそれでもいいです。

●dkmsのエラーで止まることがあります。

ERROR: Failed to run `/usr/sbin/dkms build -m nvidia -v xxx.xx -kx.xx.x-xx-generic`:

的なやつです。nvidia-installer.logを見ると、make.logを見ろと書いてあり、それを見るとgccのバージョンのエラーだと書いてあると思うので、インストーラに--no-cc-version-checkオプションをつけて最初からやり直してください。このオプションをつけたことによるバグはほぼ起きないんだろうと思いますが、ヘルプに書いてあるとおりもし起きたらめっちゃ見つけにくいものになるだろうってのはマジだと思います。どうしても怖い人はgccのバージョンを頑張って合わせればいいと思いますが僕は一回やろうとして依存関係がごちゃごちゃになったので二度とやりません。

●最後に、Xの設定をいい感じにしますか?というようなことを聞かれます。具体的には以下のような文面です。

Would you like to run the nvidia-xconfig utility to automatically update your X configuration file so that the NVIDIA X driver will be used when you restart X? Any pre-existing X configuration file will be backed up.

こういうのはたいていYesにしておけばいいものなのですがこれに関してはNoのほうが良さそうです。ここでいうXの設定とは/etc/X11/xorg.confのことなのですが、最近はxorg.confは非推奨でXが各デバイスを自動検出して動作するほうが望ましいとされているようで、実際にマルチディスプレイにしようと思ったときもこのインストーラーが書き込んだxorg.confがあると動作せず、消したら動きました。これはおそらくIntel+NVIDIAという構成にも原因があり(その証拠にノートPCの本体ディスプレイはつかず外部ディスプレイだけがつきました)、NVIDIAしか入っていないPCではYesでも問題ない気がするのですが、あってもなくてもいい設定ファイルはない方がいいでしょう。もしYesを選択してしまってもあとから/etc/X11/xorg.confを消せば問題ありません。

Intel+NVIDIAの場合、インストール終了後(前でもいいですが)にnvidia-primeパッケージを入れてください。ここも結構ハマりました。ちなみにnvidia-driver-xxxパッケージによるインストールなら自動で入ります。また、NVIDIAをアンインストールするときはnvidia-primeも一緒にアンインストールするか、prime-select intelを実行してください。じゃないとXがnvidiaをロードしようとしてGUIが起動しなかったりします。

●以下は、セキュアブートを有効にしている場合の注意点です。

●パッケージによるインストールと同様、セキュアブート設定のためのパスワード入力画面が出ます。再起動後は必ずEnroll MOKを選んでそのパスワードを入力してください。

●Building module (This may take a moment)が5%のままいつまで経っても終わらずエラーも出ない、ということがありました。これは調べても全く症例がなく苦労しましたが、straceを使って調べた結果、インストール自体は正常に行われていて画面表示だけがバグっているようでした。結論から言えば、この状態から、バグっていない場合の操作

Tab→Enter→(パスワード入力(8文字以上))→Tab→Enter→(パスワード再入力)→Tab→Enter

をそのままやると先に進むことができます。タイミングは1分くらい待てば十分だと思います(不安な人はps -aでプロセス番号調べてstrace -p xxxxで様子を見てください。module, signみたいな文字列が見えたらそこです)。これはびっくりしました。

●ここまでうまく行ったのに最後にUnable to load the 'nvidia-drm' kernel moduleと出てインストールに失敗してしまうことがあります、というか多分必ずそうなります。これは考えてみれば当然で、再起動時にパスワードを入力するのはセキュアブート有効の状態でもドライバをロードできるようにするためですから、再起動の前にロードしようとしてもできるはずがありません。おそらく実際にはインストールの主要な行程(少なくとも今述べている「第一段階」)はこのエラーが出るまでには完了しており、残るは先程Noを選んだほうがいいと述べたXの設定だけなので、インストールは成功したと思って構いません。そのままインストーラを閉じて再起動後にパスワードを入力しましょう。

 -----

以上、長々と解説してきましたがこれが第一段階になります。しかるべき再起動をしたあと、画面がついてもつかなくても、とりあえずmodprobeの候補に出てくるかの確認をしてください。第一段階とはいえここが終わればインストールは終わったということですからあとはもうすぐです。というかここまでにミスがなければこのあとの段階は要らないはずです。これ以降は主にトラブルシューティング用に書いています。

2.NVIDIAのドライバーが起動している

ドライバーが正しくインストールされてシステムに認識されていても、インストールのどこかで失敗していたり設定が間違っていたりすると起動しないことがあります。さっそく確認方法を見ていきます。

lsmod | grep nvidia

これで何行か出力があればnvidiaは正常にロードされて(起動して)います。ロードされていなければ一行も出力されません。

起動しない原因は様々なものが考えられます。いくつか状況判断に有用なコマンドを挙げておくと

lsmod | grep nouveau

cat /var/log/Xorg.0.log | grep EE

cat /var/log/Xorg.0.log | grep WW

cat /var/log/Xorg.0.log | grep -i NVIDIA

cat /var/log/gpu-manager.log

などでしょうか。nouveauがロードされているとnvidiaが起動しない場合があるのでblacklistに入れましょう(前述)。grepは適宜"-5"などのオプションをつけると前後の状況がつかみやすいです。また、modprobe nvidia_drm などとして直接nvidiaをロードしようとしてみてエラーを見てみるという方法もあります。これでmodprobe: ERROR: could not insert 'nvidia_drm': Required key not availableと出ればセキュアブートまわりのエラーだと思います。このエラーが出たあとにdmesgを実行して一番下が PKCS#7 signature not signed with a trusted keyとなっていれば間違いないです。このときは、公式の.runファイルならもう一度インストールし直し、パッケージを使っていた場合はnvidia-dkms-xxxを再インストールしましょう。こんどは忘れずに再起動後にEnroll MOKを選択しましょう。modprobe: ERROR: could not insert 'nvidia': No such deviceと出た場合、これはIntel+NVIDIAなのが原因だと思います。僕の場合はnvidia-primeを入れると解決しました。

ちなみに試しにprime-select intelにして再起動し(nvidiaはロードされない)、modprobe nvidiaとしてみると

modprobe: ERROR: ../libkmod/libkmod-module.c:832 kmod_module_insert_module() could not find module by name='off'

modprobe: ERROR: could not insert 'off': Unknown symbol in module, or unknown parameter (see dmesg)

などというエラーが出ました。これが出たらprime-select nvidiaを実行すると治るかもしれません。

また、nvidia-primeを入れていない場合、GUIは起動せず、Xorg.0.logにもエラー(EE)は出ていないということがありました。とりあえずIntel+NVIDIAの場合はnvidia-primeを入れるのを忘れないようにしてください。

あとは、テキストモードで起動したときだけnvidiaがロードされる、ということもありました。このままでは使い物になりませんが、セキュアブート周りが上手く行っていることの確認にはなりますので試してみてください。ちなみにカーネルパラメータの設定をすると上手くいくと書いてあるサイトは結構ありますが、nouveau.modeset=0とかはblacklistに書いておけば十分ですし、ほかのいろんなオプションも試しましたがいずれもあってもなくても変わらない(NVIDIAが動いている状態で変えても影響がない)ものがほとんどです。ただ一つ、nomodesetだけは入れるとNVIDIAドライバが動かなくなりますので/etc/default/grubGRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULTに入っていれば外してください。ちなみにnomodesetというオプションはNVIDIAGPUが載っているのに公式ドライバを入れていない状態のLinux(特にLinux自体のインストール時など)でGUIが出ないときにつけるとご利益があることで有名です。が、それではだめでnouveau.modeset=0なら動いたとか、さらにそれでもだめでnouveau.runpm=0なら動いたなどの情報もありました(GPU搭載ゲーミングノートへのUbuntu18.04デュアルブート時のグラフィックドライバの処理 - Qiita)。

3.Xorg周りが正しく設定されている

以上まででとりあえずnvidiaが動作する状態まではこぎつけたのですが、その後もXorgの設定や状態によっては何か不都合がある場合があります。

cat /var/log/Xorg.0.log | grep EE

で一行も出ない状態にはしたいところです。これに関しては本当に環境によるのでなんとも言えませんが、個人的に遭遇したエラーを適当に書いておきます。他のエラーでも、検索すればけっこう色んなサイトがヒットするんじゃないかと思います。

 Failed to load module "glx" (loader failed, 7)

NVIDIAのバージョン違いでした。パッケージで390、公式インストーラで430が入ってたのでパッケージの方を消したら治りました。

modeset: Failed to load module “glamoregl” (module does not exist, 0)

→xserver-xorg-core(rhelならxorg-x11-server-Xorg?)を再インストールしたら治りました。

マルチディスプレイがつかない

→とにかくnvidiaが自動生成したxorg.confは消しましょう。IDとかそれっぽいことが書いてありますが、足かせになることはあれ助けにはならないというイメージを個人的には持ちました。

余談:カーネルアップデートについて

今回あまりここではハマらなかったので詳しくは書けないのですが、カーネルアップデートに伴ってNVIDIAドライバが正常に動作しなくなった(GUIが表示されないなど)時は起動時のGRUBメニューからアップデート以前のカーネルを選択するとうまくいくことが多いです。そうなれば原因はNVIDIAで間違いないので、正常に起動しないほうのカーネルからCUIを使って新しいドライバを入れましょう。(あるいは古いほうのカーネルから新しいカーネルをreinstallしてdkmsにモジュールを再生成されることもできる?)

まとめ

長々と書いてしまいましたが、他サイトにそれほど頻繁には書いてないところだと

・.runファイルは色々とめんどくさいのでできるだけdeb等のパッケージを使う

・やむを得ず.runを使う場合、

 ・複数のGPUが入っているときはnvidia-primeを入れる

 ・あらかじめdkmsを入れておく

 ・xorg.confを自動設定させない

・セキュアブートが有効(≒ノートPC)のときは、再起動時の青い画面で"Enroll MOK"を選ぶ

カーネルパラメータにnomodesetを入れない

あたりでしょうか。

たぶんもっと様々なエラーに直面したとは思うのですがそのときは解決するのに必死でいちいちメモをすることもなかったので、そうやってここからあぶれたエラーはまた別の人を苦しめるのでしょう。一応、コメントなどしてもらえれば解決に向けて努力はしてみようと思っています。その際は

ディストリビューションの種類

lspci | grep VGA

lsmod | grep nouveau

lsmod | grep nvidia

/var/log/gpu-manager.log

grep EE /var/log/Xorg.0.log

grep -i NVIDIA /var/log/Xorg.0.log

セキュアブートの有効/無効

あたりの内容が(長いものは要約でいいので)あると助かります。きっといつかNVIDIAは動くようになるので諦めずに頑張りましょう。

【Minecraft】村人無限増殖(ver1.14.4対応)

イクラ1.14の村人無限増殖機はさっそく様々なデザインが出回っていますが、ver1.14.3では村人が使用できる位置にあるベッドのみ空きベッドとして考慮されることになり、フェンスの外などにベッドを設置する従来型のものが動かなくなったようです。

1.14.3以降にも対応しているものとしては

www.youtube.comなどがありますが、このタイプの欠点は村人の固定が厳しすぎて農業をすることができず、繁殖のための食料をプレイヤーが供給する(あるいは別途農場を作る)必要があることです。

そこで、畑と組み合わせて村人に農業をさせながら、生まれた子供は隔離し、無限に増殖させる、という装置を考えました。

とりあえず面倒な話は置いておいて作り方を知りたいという人のためにまず完成図を載せます。基本的にこの通りに作れば動くはずですが、怒りマークが出る場合、速度が遅くなってしまうので、ベッドの数を増やしてください。村人はトラップドアの穴のところに溜まっていきます。この穴からベッドに歩いていけないことが重要なので、厳選などは地下で行うとか、あるいは地上に出すならベッドの周りも枠で囲うなどしてください。

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つまり、畑とコンポスターを設置し(ここでは9x9の畑の真ん中を水源にし、その上にコンポスターを置き、村人が登って畑を荒さないように上に丸石を置きました)、その周りを囲い、1マスだけ開け、そこは高さ2マスにして(ここでは屋根を滑らかな石のハーフブロックにしています)、その一つ奥のマスは地面を1マス掘って丸石の壁(他の石の壁でも良い)を設置します。

その奥も両側に壁を作って一本道にし、途中にトラップドア2枚の落とし穴(おなじみのテクニックですね)を作ります。その先にベッドを設置します。

こうすると、1マス開けたところは、石の壁(当たり判定が1.5マス)があるため高さ1.5マスになるので、大人の村人は通ることができません。

したがってベッドは実際には使用できないので村人も増えないはずなのですが、どうやら石の壁は経路探索時には高さ1マスとして扱われるようで、村人は繁殖します。そして、生まれた子供の村人はこの隙間を通ることができるので、夜になるとベッドに向かい、穴に落ちます。ちなみに大人も夜になるとベッドに向かいますが壁のところでひっかかって出られません。

さて、このままだと3つ目のベッドは子供が使うことになり、もう増えることはないような気もしてしまいますが、穴の中に落ちた村人はベッドを使えないと判断される(先ほどの「使えると判断されるが実際には使えない」とは違います)ので、しばらく時間が経つとベッドとの紐付けが解除されます。よって、その後なら再び村人は増えることができます。その「しばらく」の前に繁殖モードに入ってしまうと怒りマークが出ることになるというわけです。

重要なのは丸石の壁の部分だけなので装置はもっと大きくすることもできます。ただ、ベッドの配置が偏りすぎると畑が村の範囲外になって農業が行われなかったり、かといってベッドの位置を分散させるとどのベッドに誰が紐付いているかわかりにくくなったりと難易度は少し上がります。

速度重視で適当に書いたので不具合や不明点はコメントお願いします。